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部下の反応がみたく、一時期、偵察用の格好をしていた。 確かに、情報が天界や魔界や冥界に漏れても仕方ない。が、真っ黒な空気を漂わす彼女の耳に入ってしまったのは誤算だ。 あれから部下は、何も言わなくなった。 着けるのは、下界へ偵察に行ったのみで。それ以外は本来の姿、老人だ。 触らぬ神に祟り無しと言うし、自分が大事なら敢えて格好の餌になる様な真似はしない方が良いと肝に銘じている。 それに、彼女こと“樹皇女”は意味なく動かないのを教えてもらった。 「ー…なんかなぁ」 『如何なさいました?』 ー…っ。 どうやら口から溢れてしまったらしい。 鳴呼、何たる失態…。 自分の不甲斐なさに頭を押さえたくなった。 不思議そうな顔で此方を見ているあたりが何とも言えない。 呼び慣れていない名で呼ぶと、こうも違和感を感じるものだろうか。昔の名に慣れてしまったせいで、転生してからの名で呼ぶと歯痒い。 「な、何でもありません…」 挙動不審になる自分って、何年ぶりだ? 頭の中で数えてみるが、覚えている限り、指で数えられるくらいだな。 が、儂は彼女を“樹皇女”と呼ぶのに不快感なのだ。今までは昔の名だったから、あまり気にしてはいなかったが、時代が変わってから名も変わるとは思ってもみなかったから気にも止めはしなかった。 『ー…それにしても、冷や汗が凄いわよ?』 「はははっ、多汗症ですかな…」 貴女が現れると、身体が反応するみたいです。と、誤魔化すのは少々、無理があるな。 自分自身にツッコミ入れていても仕方ないが…。 入れたくなる理由が目の前に存在する。 「普段は、かかないのですが…」 『急症性ですか?早く、医者に診せた方が宜しいですよ』 「えぇっ」 『ところで…精霊の場合は、どの病院ですか?』 急な質問に、儂は固まった。

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