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『聞いています?オベロン…』 彼女の声が左の耳から右に抜けていく。 ー…えっ、どの病院? 思考が上手く付いていけない。 「い、樹皇女…病院に種類があるのですか?」 『えっと、下界には…人間が通う病院と動物が通う病院。また、家畜が通う病院が存在しますが…』 如何にも…。 『貴方は、どちらに当てはまりますか?』と聞いている様なもの。 「…普通に考えて、下界の人間と同じかと」 『え、そうなんの?てっきり、精霊は動物病院かと私は思っていました…』 「それ、小動物と同じ扱いになっていますよ。というより…正解がないので。今度、担当医に聞いておきます。精霊は、どの部類に入るのかを」 『…』 聞いておかないと、周りに噂が流れてしまう。 「決して、自分が想像していたのと違うとか思わないで下さいね…」 彼女の場合だったら、意地でも動物病院とかを推しそうだ。 そもそも、小さいからと言って、扱いが小動物というのが過ったあたり凄い。 それを束ねている儂は、発言を撤回出来る立場にある。今の彼女の科白に対して、十分要領があったから『聞いてみる』と言った。 ま、担当医でも『動物病院は、有り得ません』と返してくるに違いない。 これが、世間話なら笑えるんだろうが、儂はまだ知る由もなかった。 苦手な彼女が何故、聖霊界を覗いていたのかを…。 そして、ご息子が凄く関わってくるのかを知るのは。 ー…先の先の話。 儂が必死に疑問に悩んでいる時、既に運命が廻り始めていたと誰が思うだろうか。 ほんの、女神の悪戯…。 それが合図かの様に、光の川の森にいた白い小鳥達が一斉に羽ばたいていった光景を今も忘れない。 儂の周りに漂う空気が一瞬、更なる黒さを漂わせている感じがしたけど、気のせいにしておこう。

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