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【靉流side】 あれ…。 此処は、何処だっけ? 僕は確か、喋る本に導かれてグラ-デンの歴史を知りたく、承諾した。 今にでも瞳を開けて見てみたい気持ちがあるけど、時空の中は複雑故に何が起きるか解らないから、その時代に着くまでは開けてはいけないと母様は言っていた。 『靉流、これは凄く大事な事だから、頭の隅に置いておいて。決して、時空を潜っている時は…目を開けてはいけない』 『何故ですか?』 『開けた瞬間に、パニックを起こす場合があるからよ。どんなに慣れている人だって、一瞬で体勢を整えるのは難しいとされているの…。だから、時空を潜っている時の、お約束…』 『ー…うん』 初めて母様と、指切りげんまんをした時だった。 小指と小指を絡めて、お約束…。 今も守っている僕は、時空を潜っている時に限り、瞳を開かず。無事に目的地に辿り着く事を願う。 しかしながら、過去に時空を潜って、迷子になった人物は居るんだろうか? という、疑問視が生まれるんだが…。 僕が知る限りは、本に書かれてあった著者不明の人だった気がする。 母様は、時空の中で体勢を整えるのが難しいと言っていたけど。本にも似た様な内容が書かれてあった。 その、迷子になった人は、きっと…。 浮遊術が下手だったに違いない。 重力に逆らうのではなく、任せてしまえば軽くなるのに。 なんて、ツッコミを入れてしまった。 逆に無重力の場合は、プカプカ浮いている為に何処に流されるか解らない。 これは、僕も経験してみたから実感が湧く実験だったと言えると思う。ただ、本を見ながら自身を被験者にした為、論文にするかは解らない。 私小説や実験記録録みたいな話にする部分も考えたが、被験者を準備しないといけないから諦めた。

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