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これが世に言う『紳士』と、表現するのだろう。 彼は、自分の父親と比べてみたが、やはり、伯父とは違う感じがしてきた。 別に、父親がだらしないとかはではなく。 ただ…。 男性とは、少し違ったイメージなのだろう。 「アズイ、計ったな。天界の仕事をフォルテッシモにやらせた方が都合が良いと考えた。故に、死神界の仕事を選んだな」 「滅相も、御座いません。天界の仕事は、フォルテッシモに担わした方が良いと考えたまでです…。私達が天界の仕事を担った場合の損得を計算した所、負担が倍だという事が判明したので、死神界の仕事を担った方が、効率的に良いと思ったんです…」 相変わらず頭の回転の早さは、褒めるべきだと彼は思った。 事実…。 アズイの計算は見事に的を狙っており、グラーデンの安泰は、甥っ子の速やかな判断。 如何に、仕事を早く済ませるかは、男性の腕に掛かっていた。 流石、次期冥界政府副官吏長と言われているだけあり。迅速な判断をし、親族を納得させる。 「兄上…良い息子を持ちましたな」 「…」 「伯父貴、父に言っても言葉は返って来ませんよ。何時も、私の事など見ているのかさえ解らないのですから…」 「…そうだったな」 この場において、男性は彼の父親に話を掛けた。 無論、返って来るのは無言だ。 何が…。 切っ掛けで、言葉を話さなくなったかは不明だが、言えるのはアズイの事を口にしてしまうと、上の空状態になる。 昔は、仲が悪いという訳でもなかった。彼の中に映る兄は、にこやかに笑っていた。 思い返せば、悔いしかない。 「何処かに、親族を秘薬があれば良いのに。叔父様の瞳に、アズイが映る薬…」 『あったら、苦労しない』と、言いたげな表情を浮かべたが、従兄には映ってなかったらしい。 彼は再び、資料に目を通し、来月の契りの事を考えていた。

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