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3ー10
この居たたまれない時間をどうにかしたい。
自棄に、針の音が気になる。
『彼の顔が…極悪顔というイメージは、強ち間違っていないかも知れないわ。しかし、湫ちゃんがアズイの顔を想像していたなんて…ふふふっ』
「はぁぁ、申し訳ありません…」
何せ、紹介してもらった時に、どういった顔で逢おうか悩んでいた。
『それより、畏まった名前の呼び方をしなくても、怒らないのに。何時もみたく『大叔母様』と、呼んでくれた方が助かるわ』
「…っ、失礼致しました。大叔母様」
『まぁ…。湫ちゃんの事だから、気が抜けていたのでしょう』
「相変わらず、大叔母様には、敵わない…」
本当、頭が上がらなくなる。
俺の性格を知っていての指摘とは、抜かり無い洞察力。
それくらいの瞬発力が俺にもあれば、仕事も恋愛も両立出来るのに、現実は中々、難しい。
『湫ちゃん…あの資料はなんですの?』
「あれは、魂の数と火山の数と水に関しての資料です。これで、結構、時間を費やしてしまいました…」
ちらりと、彼女は机に置かれてあった資料が気になったらしい。
あれのお陰で。
素敵な休日を先伸ばしされたのは、言うまでもない。
『へーっ…。魂の数。この場合は、御魂かしら。火山なら、活発に動く活動性火山。水なら、湖の方かしら…。靉流にやらせてみようかしら』
いやいや、彼、やるかも解らないですよ。
「それ、本来、俺の仕事じゃないんですよ…」
『だったら、尚更…靉流にやらせてみたいわ。丁度、原理の勉強も兼ねているから、貸してくれると、助かるんだけど。生憎、私の状況じゃ触れられないから、湫ちゃんの術で…コンパクトに纏めてくれると、有り難いわ』
『尚更』というのが、強調されているのがまた恐怖を煽る。
息子に原理の勉強をさせる親は彼女しかいないだろう。
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