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万年筆に染みるインクの匂い。 古風溢れる瞬間。 公爵家が使う、烙印を、最後に押して、出すという工程までが、何とも味がある感じがして、窓から入る微風に吹かれながら、古代のローマ気分を、味わうのも悪くない。 もう、うっとりしそうになる。 ティータイムには、柑橘系の香りが漂う、アールグレイとかも良いが。 晩酌するなら、僕は、しゅわしゅわとした泡が特徴のシャンパンあたりが、好み。 どちらも、捨てがたいけど、忘れてはいけないのが、一緒に、添える食べ物。 ティータイムの時は、焼き菓子を添えて、パリの王族風に。晩酌する時は、果実を添えて、ちょっと、お洒落な感じにしたい。 そうすると、忘れられないのが、音楽なんだけど、大方、クラシックあたりから始まる。 『ふふふっ』 母様が笑う。 多分、流れてくる映像が、面白いのだろう。 ー…今頃。 盛大なオーケストラが、広がっているに違いない。 指揮者に合わせ、歌い出すオペラ女優とかが居るであろう古代ローマの劇場。 拍手に包まれながら…。 踊りが始まる。 そいゆう風景が、母様の中から流れているんじゃないかと、僕は、予想した。 『僕も、頑張って、スラスラと、字を記入出来る様にしたいです…』 『音楽に合わせながら?』 『はい…』 『それは、楽しそうね。靉流の脳内から流れてくる映像が、凄く、喜びを感じる物語に、なっていたから、私から、貴方にプレゼントを。この、任務が終わったら、前から逢いたがっていた人物に逢ってみて。シェークスピアの代表作『真夏の夜の夢』に、出てくる精霊王“オベロン”』 ー…嘘っ。 思わず、開いた瞳が、大きくなってしまう。 『い、今のは…』 『『嘘じゃない?』と、言った顔ね。でも、本当。彼に、お願いしてみたら、快く、承諾してくれたわ』 オペラで有名なシェークスピアの代表作『真夏の夜の夢』に、出演している精霊の王“オベロン”に、逢えるとか、夢みたい。

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