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4ー8
万年筆に染みるインクの匂い。
古風溢れる瞬間。
公爵家が使う、烙印を、最後に押して、出すという工程までが、何とも味がある感じがして、窓から入る微風に吹かれながら、古代のローマ気分を、味わうのも悪くない。
もう、うっとりしそうになる。
ティータイムには、柑橘系の香りが漂う、アールグレイとかも良いが。
晩酌するなら、僕は、しゅわしゅわとした泡が特徴のシャンパンあたりが、好み。
どちらも、捨てがたいけど、忘れてはいけないのが、一緒に、添える食べ物。
ティータイムの時は、焼き菓子を添えて、パリの王族風に。晩酌する時は、果実を添えて、ちょっと、お洒落な感じにしたい。
そうすると、忘れられないのが、音楽なんだけど、大方、クラシックあたりから始まる。
『ふふふっ』
母様が笑う。
多分、流れてくる映像が、面白いのだろう。
ー…今頃。
盛大なオーケストラが、広がっているに違いない。
指揮者に合わせ、歌い出すオペラ女優とかが居るであろう古代ローマの劇場。
拍手に包まれながら…。
踊りが始まる。
そいゆう風景が、母様の中から流れているんじゃないかと、僕は、予想した。
『僕も、頑張って、スラスラと、字を記入出来る様にしたいです…』
『音楽に合わせながら?』
『はい…』
『それは、楽しそうね。靉流の脳内から流れてくる映像が、凄く、喜びを感じる物語に、なっていたから、私から、貴方にプレゼントを。この、任務が終わったら、前から逢いたがっていた人物に逢ってみて。シェークスピアの代表作『真夏の夜の夢』に、出てくる精霊王“オベロン”』
ー…嘘っ。
思わず、開いた瞳が、大きくなってしまう。
『い、今のは…』
『『嘘じゃない?』と、言った顔ね。でも、本当。彼に、お願いしてみたら、快く、承諾してくれたわ』
オペラで有名なシェークスピアの代表作『真夏の夜の夢』に、出演している精霊の王“オベロン”に、逢えるとか、夢みたい。
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