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5ー1

「さて、不法侵入に軈て、なりそうだったけど…一人になった事で、少し、実験を…」 少女の周りに、ふんわりと、柔らかな雰囲気が漂う。 こいゆう時は…。 大抵、機嫌が良い時だ。 愛らしく『実験』と、口にしているが、本当は、術の練習だったりする。 感覚を研ぎ澄ませながら、行う時は、周りに誰も居ない時に、限るらしい。 何故なら、彼女が使う術に意味があるからだ。 遠き昔、何度か、試していた古代の術。 あの頃は…。 双子の弟が居て。 彼には、民達の進化を見守る方を、選ばせた。 私は、國と一つになる事で、全てを見透す様に。 だからか。 時折、時空の中で浸ってしまう。 「…あまり、見られるのは、好まないのですが」 「…」 「その気、先程の方とは、少し、違いますね。大地が怯えているのを感じます…」 少女は、全体に感じる気を、気にしながら話す。 此処、最近は、魔族の出入りも少ないと、母親に聞かされていたが、今日は違うらしい。 術を練習する以前に、実験をしようと、心意気があったのに、相手が黙ったまま見ているものだから、発動が出来ないのをレイナは悩んだ。 ー…それに。 大地が怯えている。 「どうぞ、そのまま続けて下さい。レディー」 静かに見ていた者が口を開く。 低いバリトンの声音。 父様の配下かしら? 「そう、仰られましても…幼子の術を見ても、楽しくありませんよ…」 「貴女を見ているだけで、十分です」 「可笑しな方…」 「そいゆう貴女は…愛らしい」 声だけで、相手を判断するのは難しいが、どうやら、攻撃を仕掛けに来た者ではないらしい。 もし、攻撃だとすれば、あのリオの城に居る、伯父がやって来るのを知っていた。 そんな事を他所に、レイナは頭の中にある魔族のリストを開いていった。 父親の配下なら、侯爵の者だろうか。確か、魔王の寵愛を受けた一族が居るのを、聞いた事があった。

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