45 / 119
5ー1
「さて、不法侵入に軈て、なりそうだったけど…一人になった事で、少し、実験を…」
少女の周りに、ふんわりと、柔らかな雰囲気が漂う。
こいゆう時は…。
大抵、機嫌が良い時だ。
愛らしく『実験』と、口にしているが、本当は、術の練習だったりする。
感覚を研ぎ澄ませながら、行う時は、周りに誰も居ない時に、限るらしい。
何故なら、彼女が使う術に意味があるからだ。
遠き昔、何度か、試していた古代の術。
あの頃は…。
双子の弟が居て。
彼には、民達の進化を見守る方を、選ばせた。
私は、國と一つになる事で、全てを見透す様に。
だからか。
時折、時空の中で浸ってしまう。
「…あまり、見られるのは、好まないのですが」
「…」
「その気、先程の方とは、少し、違いますね。大地が怯えているのを感じます…」
少女は、全体に感じる気を、気にしながら話す。
此処、最近は、魔族の出入りも少ないと、母親に聞かされていたが、今日は違うらしい。
術を練習する以前に、実験をしようと、心意気があったのに、相手が黙ったまま見ているものだから、発動が出来ないのをレイナは悩んだ。
ー…それに。
大地が怯えている。
「どうぞ、そのまま続けて下さい。レディー」
静かに見ていた者が口を開く。
低いバリトンの声音。
父様の配下かしら?
「そう、仰られましても…幼子の術を見ても、楽しくありませんよ…」
「貴女を見ているだけで、十分です」
「可笑しな方…」
「そいゆう貴女は…愛らしい」
声だけで、相手を判断するのは難しいが、どうやら、攻撃を仕掛けに来た者ではないらしい。
もし、攻撃だとすれば、あのリオの城に居る、伯父がやって来るのを知っていた。
そんな事を他所に、レイナは頭の中にある魔族のリストを開いていった。
父親の配下なら、侯爵の者だろうか。確か、魔王の寵愛を受けた一族が居るのを、聞いた事があった。
ともだちにシェアしよう!