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ー冥界・グラーデン邸・書斎部屋 チクタクと、針の音が鳴る。 執事により、淹れられた温かな珈琲を、手に取り。男性は、一息吐いた。 「お疲れ様」 「顔を見せたと、思えば、ニヤニヤしているが…」 気配を感じさせない辺りが、何とも言えないのが、彼の特徴だろうか。アズイは、相手を見るなり、そう、感じた。 「聞いたよ?契りの相手、天界を跨ぐ姫君だと」 「それ、貴族の噂だろう。アレが跨ぐのは、國全土だ。フォルテッシモに居るギオン王の妹…」 「うわぁぁ、アズイ、やるね。で、あの、威厳な冥王の妹を、どうやって、落としたのかを…教えて欲しい」 「話せば、長くなる…」 グラーデン邸に、顔を出したのは、それが目的か。 “樹”を、落としたのかを聞きたいが為に、態々、彼が、彼処から出てくる訳だ。 「まぁ、時間は、たっぷりあるから、聞こう。でなければ…死神界から出てきた意味が無い」 『ー…その、死神界にも兄が居るんだけどな』と、アズイは、肩の荷を下ろし、小さな声音で、呟いた。 聞かさなければ、後が面倒臭いのを知っている彼は、そっと、写真立てに入っている写真を見つめる。 「俺が、彼女と、出逢ったのは…丁度、聖霊界の狭間らへんだったかな…」 「聖霊界の狭間で、何をしていたのかを、聞きたいんだけど」 「自棄に、黒い気を放っていたもんだから、最初は、魔族だと思った…」 「…」 長い白い髪をしていて、明らかに天界の者の筈なのだが、矢鱈と、周りに放たれた気が、黒すぎて、魔族に、見えたのは本当。 だけど…。 手にしていた物を見て、ビックリした。 まだ、生まれて間もない、小さな小鳥を、彼女は持っていた。 アズイは、不意に、声を掛けた。 『こんにちわ…』 『あ、今は歴史ある冥界王族の“グラーデン”の者ですね』 ふんわりと、微笑む姿に、一瞬、ドキンとしたのを覚えている。 彼は、彼女の事を思い出しながら、話した。

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