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【アズイside】
やっと、一段落、終えたと、思えば。
珍しく顔を出す彼に、溜め息が漏れた。普段は、決して、仕事と、たまに、飲み以外では、冥界には足を運ばないのに、此処へ、来たのが“契り”を交わす相手が気になって。死神界から態々、来るとは思わなかった。
噂兼々だろう。
國を跨ぐ姫君と、冥界王族の一人である『グラーデン』の俺が、契りを交わすなんて。
出逢いは、兎も角、偶然で。
本当に。
聖霊界の、狭間だったのだから、仕方ない。
『次、何時、逢えるのか』と、甘い期待をしといた俺は。
逢う場所を、指定していなかったのを、思い出した。
彼女は、天界で棲んでいる分、冥界に顔を出す確率が低い。
だとすれば、俺なら、どうすると、考えた。
紳士的に対応するならば、社交ダンスが開かれる舞台。
そいゆうのを、待ち望んでいたな。
『叔母様が申していましたが“フィニア”とは、母方のミドルネームだと、聞いています…』
異なる瞳が、真摯に、見つめてくるものだから。
『そうです…。“フィニア”は、母方のミドルネーム』
『でも、瞳は…魔界王族が一人“フリア”の証。多分、叔母様が関係しているんだと、思いますわ…』
俺でも、少しくらいなら、魔界王族の事は、知っている。冥界政府内に、所属しているなら、天界は及び、魔界、死神界に関する情報は、把握済み。
尚更“樹”が、口にした一族は、魔界帝国第一圈を、管轄にしている一族。
そんな事に、彼女の叔母が関係しているなら『フリア』の証とやらを『グラーデン』の血筋が引き継いでいるのを、毛嫌いしているだろうな。
「時々、彼女が口にする事がある」
「ん?」
「大死神とは、ナルシストで、ド鬼畜で、ドSで、二面性を持ち合わせた人物だと。ついでに捕捉すれば…自分以上に、美しい存在じゃなければ、嫁にしないと、聞いたが」
「…っ」
どうやら、図星みたいだ。
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