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“樹”が言う事に、少々、疑問を感じていたが、リュートリアの表情を見れば、解る。 大死神の情報は、取り入れておかないと、直に、仕事をする時に、大変な目に合う。何処かで、馬が合わなかった場合の土産として、使わせてもらおうと、考えた。 仕事は、お互いの利益を、考えなければ、上手くいかない。 “フォルテッシモ”が、天界の仕事を担う様に。 “グラーデン”は、死神界の仕事を担うくらいの功績を。 ー…立てなければいけない。 元老連中が。 文句を言わずに、任せられる立場になれば、二面性ある大死神とも、上手く、パートナーとして、やっていけるかも知れないと、俺は、考えた訳だが。 「その姫君は、何故…大死神に、詳しいのかな?」 「彼方此方に…兄が居るらしい。俺にすら、隠している事が多々ある。まぁ、大死神に関しては、人一倍、詳しい」 冷や汗垂らしながら、聞いてくる辺りが最早、哀れになってきた。 しかし、掟は存在しており、お互いの領域の問題に、私情を挟んでしまえば、死活問題になる。 そう…。 “樹”に、習った。 「アズイの優しい微笑みを見るのは、良いけど。何処か…気色悪さを感じるのは、何故だろう…」 鳴呼、悪かったな。 思い出して話すと、何故か、移ってしまうんだ。 穏やかな気持ちにさせる者と。 契りを交わすせいか、解らないけど、矢鱈と、うっすらと、光景が浮かんでくる。 昼下がりの屋敷のが中で…。 一人の青年が、穏やかな表情で、本を読んでいる姿が。 あれは、どう、見ても、彼女の雰囲気を、纏いつつ、ちょっと、抜けた感じの子だろう。 何時の時代の子なのか、気になる所だ。 ああいう、御子だったら、素直で、純粋な一面を、取り持っているに違いない。 『ほんわか』という言葉が似合う子だ。

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