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5ー13

不思議な不思議な夢の中。 さざ波に、揺られている感覚に、襲われた彼は、目を覚ました。 時計を見ると、軈て、夜中の二時を指そうとしていた。 夏だとはいえ…。 窓を、開けていたせいか。 そう…。 思い。 ベッドから、降りて、窓を、閉めようとした瞬間、広がる世界に、唖然とさせられた。 「…此処、何処」 思い返せば、仕事の疲れと、契りを交わす事を、考えていたせいで、ベッドにダイブしたのは、覚えている。 確かに、夏は、精霊が、時折、迷い込んでくると、聞いた事はあるが、生憎、二十年間、生きてきた中で。 経験した事が、無いので、頭の中で、除外した。 だとすれば…。 「樹か」 もし、これが“彼女”だったら。 ほんの少し、頬を染めるアズイは、瞳に、映された光景を。眺めつつ、彼方此方に、飛び交う光の玉が生まれてくる瞬間を、灼き付けた。 こんな、幻想の世界を…。 冥界に。 ー…持ってこようとは。 「少し、洒落たシチュエーションじゃないか?何も、普通に、逢いに来れば、良いのに」 何処かで、女性が聞いていたら『ふふっ』と、微笑んでいるのであろう。 例え、其処が、夢の世界だとしても、彼には、解る筈が無い。 緻密に、作り上げられた世界は。 新たな魂が、魅せる世界なのだと。 『小さな魂が、運ばれるのは、素敵な紳士の元に、舞い降りた贈り物でした…』 真夏の暑さを、吹き飛ばすぐらいに。 爽やかな男性へと、成長しているでしょう。 「鳴呼、花の精霊か。何処からともなく、柔らかい感じのトーンだな。精霊の王“オベロン”も、粋な事をなさる。今度、聖霊界へ、妻となる者と、顔を出すとしよう」 ー…それは、止めておいた方が良い。 夜空に浮かぶ、星々が、叫ぶ。 ー…彼女の掟が、存在する。 しかし、声無き声が、アズイには、届く筈なく。 あまりにも、幸せそうな顔をするもんだから…。 花の精霊は、言えなかった。 この夢殿に…。 ー…案内したのは。 天界を、跨ぐ、姫君なのだと。 時空の流れに沿い、一つの星が輝くのを見つめた。

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