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5ー16
「天界第九書…神の恩恵に、預かり、魔族の侵入を、断ります…」
指を鳴らすと、用意されていたテーブルが消えた。
彼女は、今から来るであろう客人の方を、真っ直ぐと、見つめ、待っていた。
あまり、時間と、体力を、使いたくないのが本音。
だって…。
使うと、彼方此方に、影響が出ると、元老連中が、ほざくんですもの。
『姫、お力は、あまり、使わない様に』
宥める様にして、言う老人の姿が、頭に、浮かぶ。
昔に、使って、一時期、聖霊界が、傾いてしまった事がある。それは、幼子だったから、許されたものの。流石に、この年齢になってからは、許されないのを、レイナは、知っていた。
「ちょっと、二度目の訪問とか、聞いていませんよ。ルィーアイン・シュタイン卿…」
忘れていた訳ではないが、彼女の頭には、魔族の名前リストが入っている。
誰の配下か、既に、チェック済み。
よって、彼は、招かざられぬ客。
父親の配下なら、その後に来た貴族の方だろう。
何とも、紳士的な対応が、レイナの心を、擽ったのは、言うまでもない。
もう一度、逢うなら、彼が良かったと、心の中で、思った。
「偶然ですね、レイナ皇女。あの後、調べさせてもらいましたよ。魔王“セリオン”王の、愛娘とは、驚いた」
「あら…調べたんですか?」
態々、ご丁寧に、調べてくれるとは。
やっぱり、大伯父の血筋なだけある。
「容姿の割には、力は、計り知れないと、父が申していました」
「…」
「ご存知でしょう?私の父を」
「頭に、蝿を、飛ばした方かしら…」
一瞬、忘れていた事が、甦ってくる。
彼の父親って…。
フラッシュバックの様に、甦ってきた記憶の中に、確かに居た。
『はぁい、レイナ。お久しぶりぃ…。相変わらず、セリオンに、そっくりだね…』
『そいゆう貴方は、何時しかの“息子”を、二で足したようなチャラ男ですわね』
カモン。
私の、黒歴史。
彼女は、思い出しながら、相手の行動を、伺っていた。
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