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耳に入ってこないのが、不思議ではあるが、彼女の血を引いといた場合は、恐怖の対象二になる。 ー…いいえ、オベロン様。正確的には、三です。 「そうだったかな?」 思わず、首を傾げてしまう。 ー…“樹”皇女には、遥か昔に、一人、御子が存在します。 草の精霊が、囁く。 今の御子の前に、もう一人居たかな? 主は、解る。 見た目も、性格的にも、母親譲りという部分の父親譲りが、若干、目立つ。 ー…ま、本人に言ったら、怒られるけど。 『それ、私に問いますの?』 いかん…。 幻聴が、聞こえてくる。 ー…でも、今の御子は、オベロン様が、心配する事はありません。 儂が、不安そうな表情をしていたせいだろう。 草の精霊が、優しく、答えてくれた。 「そう言うが…。二の舞は、御免だ。儂も、若かった故、聖霊界が、ああいう風になってしまうのは…心痛い。どいゆう子なのかを、見てみないと、精霊の王としての立場が危うい」 ー…まぁ、夜の精霊と、立場逆転。 「笑い事じゃないよ」 ー…ふふふっ。 否、部下と、立場逆転なんて、恥じすぎる。 どんだけ、部下のポジションが、役得なのかを、今一、見直す必要があると思う。 昔みたいに、うたた寝だけはしない様にしないと、悪夢が、再び、甦ってきそうだ。 いくら、魔族が侵入したかといい、聖霊界に、影響を及ぼすのは解ってた筈だ。 彼女自身の見えない理の中に、存在しているのは、儂も少なからず解る。 だからこそ、御子を、見てみたいと思った。 儂を、題材にして書いたという小説。 是非に、拝ましてもらおうなんて、イケイケの時代にはなかった経験。 今となっては『真夏の夜の夢』に、感謝すべきなのかも知れない。 アレが無ければ、儂の名は、世に、知れ渡っていないだろう。 そう、思う、イケイケな自分の姿が、水辺に浮かびながら消えていった。 悪夢の日なんか、思い返している場合じゃなかったな。

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