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第八話:精霊の子守唄(結奈side)

ー天界・レイ・光皇城・テラス 「湫の馬鹿ぁぁぁぁ」 いきなり大声で、叫んだ。 私は、手にしていた紙を、握り締めて、沸々と、煮えたぎっていた。 遡ること、一週間前、弟である湫が、仕事の山を持ってきた。それも、問題児二人組の物も、加算してだ。 『兄様、これ、宜しく…』 然り気無く、置いていくもんだから何かな?と、思ったら、母様の『うふっ、仕事増やしちゃった』という、お決まりのくせじゃないか。 よりによって、前姫神の弟君であらされる“霰月”様専属の母様が、残した仕事を、私が、片付ける羽目になるとは。 もっと、不思議なのは。 この、手紙。 『ー…俺、暫く、休暇を、頂くので。用がある場合は、式役なり、何なり、飛ばして下さい。追記:大叔母様が…精霊の道を開けてとおいての事。以上…』 何で、大叔母の事が、入っているのかを、教えてくれ。 「精霊の道ったって、了承が無いと、開けられないの解っている筈なんだが」 彼処は、静欄(せいら)叔母様の管轄だぞ。 簡単に…。 開けてもらえるとは、思わないが。 「それに、精霊の道なんて、久しぶりに聞いた。幼い頃は…足を運んではいたが。不思議なお伽噺を開いていくみたいで、面白かったな」 随分、昔に、通った限り。 全然…。 通らなくなった精霊の道がある渡り廊下。 今でも、使われているのかは不明だが。 年に、何回かは、検査がある。 『聖霊にはね『光の川の森』という場所が、存在して、其処に、精霊の王“オベロン”が、居るのよ』 そう、幼い頃に、母様が、話していたっけ。 実際…。 棲んでいるに、近いんじゃないかと、私は思う。 一日の大半を、光の川の森で、過ごしている訳だし。 「昔は、イケイケだったという話しも聞いた事がある。今の姿じゃ、考えきれないけど」 思わず、微笑んでしまった。 彼の姿を知っているからこそ、昔の事が、想像出来ない。 私は、椅子に腰を下ろして、握り締めていた紙を、開いた。

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