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まったく、あの弟は。
休暇を取るのは良いが、仕事内容を、説明してから、休みを入れてくれ。
私の負担が倍になってしまうのを、計算してから、この量を持ってきたに違いない。
「しかしながら、静欄叔母様を、どう、説得するかが問題だ…」
一筋縄ではいかないのが静欄叔母様。
『頼まれまして』だけで、開けてくれないのは、見え見えだ。
「あぁ、精霊の王“オベロン”と言えば、有名な作品があったな。湫も、嵌まっていたか。シェークスピアの代表作『真夏の夜の夢』。オペラの真骨頂とも言える作品で…観る者を魅了する素晴らしいエンターティナーとも言っても過言ではない…」
十九世紀のローマに、態々、足を伸ばしたくらいだ。
歓声なる熱狂に、包まれた客席は、拍手喝采で一杯だったのだろう。
何時までも、熱に包まれながら。
冷めるのが…。
遅かったと、湫は、言っていたな。
「色んな形で、精霊の王“オベロン”は、描かれているが、やはり、原作では若い彼が人助けをするという風に書かれている。強ち、イケイケも、間違ってはいない。さて、その、原作だが」
生憎、私は、原作を持っている。
湫には、内緒だが。
知ってしまえば、湫は、想い人に合う接点を、作るだろう。
大叔母の第二子…。
ー…靉流・G・フィニア。
冥界王族『グラーデン』の血を引く、皇子様。
何故、私が、彼を知っているか。
原因は…。
叔父が、ちらりと、見せていた秘密報告書にある。
普通は…。
隠すんだがな。
手に抱えていた資料の中に、写真が貼られてあったから。まさかと、思ったが。
私が、見間違える筈がない。
「大叔母譲りの異なる瞳、冥界王族の証とも云えるピアス。そして、うっすらと、漂う父親の雰囲気…」
あれだけは、隠せないだろう。
父親譲りの…。
雰囲気を、纏っているのは。
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