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【樹side】 「あら、珍しく、目覚めたと、思ったら…古代冥界語を、使うなんて」 靉流と、同じく…。 窓を開けながら、風に吹かれるレースカーテンの元で、彼は、歌を聞きながら眠るのが、癖だった。 アズイを、映す薬があるなら…。 ー…あの頃に。 試しておくべきだった。 決して、嫌だから映さないとかじゃなく、彼の瞳は、何時しか、見えなくなっていた。 色んな医学書を、読んでも、医者が、匙を投げるくらいだ。 謂わば、原因不明の病。 それでも、彼は『治さないで欲しい』と、願った。 「冥界王族が、流行り病ならぬ、原因不明の病なんて知ったら、他に、行き渡ったら、家系の問題に、携わってくる。それを、避けるべく、早期退職をした彼の、心を、尊重すべきだと思うわ」 『グラーデン』の歴史に、深く、刻まれるのは…。 「彼の栄光」 素晴らしく、古代冥界語に、愛されし、男性。 私の、存在に、気付くとは、伊達に、歳を重ねていませんね。 アズイですら、仕組まれた事を、察知するのに、千年、費やす。 それを、御霊を、見た瞬間に、誰の子かを、解くなんて、凄い洞察力を、お持ち。 視えないと。 第六管が、働くという。 それは、医学的にも、説明されていて、被験者を、使って。 実験されているから、確証がいく物…。 他にあげるなら、目が見えない人の為に、指の感覚だけで、探り当てるという諸説もある。 感性が、働くのは、第六管が、関わっているからだと、言える。 それを…。 活かすのも、また、素晴らしい物だと、私は、思う。 「リーティアース・メカリィトゥ・アスオリィー」 久しぶりに、冥界王族“グラーデン”の主の言葉を、聞きました。 ですから、感謝を込めて。 素敵な贈り物に、忘れらし頃の話を、聞かせてあげて下さい。 “グラーデン”の血筋が、甦るとすれば、その子は、大切な思い出の一つを、貴方に、授けるでしょう。

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