92 / 119
10-1
思い出は、時として、牙を向く。
こいゆう事は、言いたくないが、あの子は、運命だったかも知れない。
どうしても…。
受け入れていれたくなかった。
息子の運命(さだめ)を。
だから、私は、避ける様になった。
ー…そして、私に似たアズイ。
健康的で、頭が良く、よく、気が回る。
将来は、冥界政府内で、働けるだろう。
この美しい世界は、秘密の場所である。
キラキラと、光、水面に映る姿を見た男性は、何処か、儚く、見えた。それを、少女は、瞳に映していた。冥界王族で、最も、古代冥界語に愛された古の血を引く一族。
何処からとも無く、降り掛かった呪いは、彼等を、蝕むかも知れない。
だけど、彼は、叔母とのお見合いを、台無しにしていったのは、確か。だが、それが原因ではないのは確かだ。
『まぁ…。叔母様の色気にやられなかった唯一の男ってだけで、鼻が高いですわ…』
フリアの血を引いているのは、息子であるアズイ卿だろうというのは、把握していた彼女。
あの、気高く、美しい叔母に『私には、既に、心に決めた女性が居る』と、言って断った。
それは、唖然とするし、プライドが高い叔母は、怒るだろう。お陰で、彼の息子は『フリア』を継げないのだから。
相当な、ご立腹である。
『良いですか。あの、爽やか男、私を、貶した報いは、必ず…受けてもらいますわ。私に、恥をかかせた事を、後悔させてあげますわ。よって、レイナ、彼の息子と契りを交わす時は、記憶の中に、私の顔を、描いてしまいなさい』
『解りましたわ。叔母様…』
返事をした少女は、叔母の形相を思い出した。
本当、彼は、何故、社交辞令を言えないのだろうか。
神の世界は、一夫多妻制だ。妻の一人や二人はと、思ったが、男性の性格を考えたら無理だと気付いた。
愛する人は、ただ一人だけと、決めている王族の一人。
有耶無耶に出来る訳にもいかない。
ともだちにシェアしよう!