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母様に抱かれた夢。
幸せな夢を見る為に、僕は、父様の傍で、時を待つ。
それまでは、お休みなさい。
小さな小さな御霊…。
“グラーデン”の血が、囁く時、貴方は、きっと解放するのでしょう。
天界と、冥界の古から結ばれた契約を。
その時は、私も覚悟を決めなければいけませんね。
『で、聖霊界の件、どうする気?』
貴様が、黙っておけば良いだろう。
あ、失礼いたしました。
ー…“兄様”。
態々、体を借りなくても、出てこれるでしょうに。
この時代にまで、顔を出すなんて。
『死を持って、償うべきかと』
『君は、まったく…』
『いえ…。兄さんは『殺してしまいなさい』と、申していたので、てっきり、フォルテッシモの家系に殺られたのかなと、思いましたわ』
『…アイツ、僕に、何の怨みが』
遡る事、五百十年前にあるかと思いますわ。
神々の世界で、悪運なんて物を発揮するから、兄は、切れて『この、屁理屈兄、私は、貴様を、兄として認めない。よって、兄弟の縁を切れ!生まれてきた妹に、悪影響だ』と、吐いたそうです。
しかしながら、悪運を発揮するって、死神界であるのかしら。この人、自分の美しさに酔いしれているナルシスト。
『それは、確執を生んだ兄様のせいですわ』
哀れみを掛けても仕方ないので、本当の事を告げますわ。
というか、人の夢の中に入ってきたら失礼じゃないですか。
ー…彼、若いとはいえ。
立派な冥界王族『グラデーン』の家系。
いくら、これから関わるかと言って、まだまだ先の事。
ですから、兄様は、眠っているべきですわ。
『まぁ、それは、直接、本人から聞くとして。本当、レイナ、聖霊界の件、どうするつもり?彼、聖霊に好かれやすい御子じゃないか。これからが、楽しみだよ。あの、古の冥界王族“グラーデン”の血筋とは…。偶然か、必然か…』
それなら、解っていますわ。
これは、必然。
決して…。
購えない血ですもの。
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