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ー魔界・第ニ圏・ティーベル邸・リビング 「おいっ、大事な息子を、ほったらかしで、良いのか?」 不意に、声を掛けられた女性は、にこやかに笑う。 「心配しなくても、少し、自分の家系の、お勉強をしに行っているだけだから…」 「昔から思うが、御子を、放置プレーするのは、趣味か。幾万年前は、確か『時空旅行に、行ってらっしゃい!』と、跡継ぎを…投げていたな」 ふっと、彼女は、思い返す様に、話す。 ー…そんな、昔の事。 お陰で、強い子に、育ったわ。 『母様…私は、立派に、一つの國を、創ってみせます』 時空旅行は、子供を、成長させるのよね。 「だって、可愛い子には、旅をさせろと…昔から、言われているじゃありませんか…。馬鹿じゃない限り、掟を、破ったりしませんよ。というか、ご用があったんじゃありませんか?レディーヤ…」 「叔母様が、発狂していたぞ。何でも“グラーデン”の、あの、爽やか男、覚悟とか言っていた」 「少し、疲れているんじゃありませんか。叔母様、お見合いを、断れて以来、根に、持っていますから。靉流の祖父に…」 「それが、とてつもなく、恐ろしいと、考えないか。フリアじゃなく、フィニアを…名乗らせているあたり」 レディーヤと、呼ばれた女性は、半分、溜め息を吐いてた。同年代である二人は、互いの目が合う。 叔母が、今でも、発狂するには、理由があるのだ。 『気付け薬』を、大方、打ち過ぎなのだろう。然程、心配する必要も、無いだろうが、フリアの屋敷で、やっているのは、姪っ子としても不安になるだろう。 「仕方ないじゃない。それが、条件ですもの。決して『フリア』を、名乗らせない変わりに、靉流を、認めるのが、叔母様との約束…」 でなければ、息子は、今でも、影に隠れたままになってしまう。 親としては、心、苦しい。

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