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【アルゼスside】 おや? 珍しく、踊っているんですかね。 嬉しそうな声音が、何処からともなく聞こえてくる。 「別に…異界を開いてまでやらなくっても、此方で、踊ってさえくれれば宜しいのに。お嬢様」 冥界王族『グラーデン』の皇子との間に、御子を授かるお嬢様。 私達と出逢う前から解りきっていた事だとか。兄が、ルィーアインを殺した事により魔界では、噂になっていました。 それも今では、彼も立派な立場へ付いたのだから、安心でしょう。 -…但し。 あの、冥界官吏長を、上司に持ったら、苦労するでしょうね。 『アズイ·G·フィニア卿』。 魔界五大王族『フリア』の血を引く、皇子。 「今暫く、逢わないので、彼の事は…心配しなくっても宜しいでしょう。お嬢様が、力を使わない限り、安心でしょうし」 「それは、アルゼス様の感ですか?」 「ご想像に、お任せします」 「後から、アルザリ様に、怒られませんか?」 そうきますか。 確かに、兄は…。 嫉妬深いですが、無害な者に手を掛ける様な馬鹿な真似はしない。 でなければ、お嬢様との契を、許すなんて有り得ないですから。 手から零れ落ちるモノを手に入れた時、人は、優越感に浸りたくなる。 「ルィーアインでもあるまいし、無闇に、剣を抜いたりしないでしょう。アチラは、冥界王族。此方は、魔界貴族。お互いに、立場を弁えているつもりですよ…。良いじゃないですか、忘れらし、王族『グラーデン』。現代で言えば、人間国宝になれる」 「言われれば、アチラの一族は、少しばかり特殊な血筋でしたね。『フリア』の血を引いていながら、名乗らせてもらえない。ブェルブニの皇女様を振ったとか…」 ま、それが、原因で、今だに、根に持たれています。 根性あると思いましたよ。 お嬢様の叔母様を、振るとは。

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