126 / 129
12ー4
【アルゼスside】
おや?
珍しく、踊っているんですかね。
嬉しそうな声音が、何処からともなく聞こえてくる。
「別に…異界を開いてまでやらなくっても、此方で、踊ってさえくれれば宜しいのに。お嬢様」
冥界王族『グラーデン』の皇子との間に、御子を授かるお嬢様。
私達と出逢う前から解りきっていた事だとか。兄が、ルィーアインを殺した事により魔界では、噂になっていました。
それも今では、彼も立派な立場へ付いたのだから、安心でしょう。
-…但し。
あの、冥界官吏長を、上司に持ったら、苦労するでしょうね。
『アズイ·G·フィニア卿』。
魔界五大王族『フリア』の血を引く、皇子。
「今暫く、逢わないので、彼の事は…心配しなくっても宜しいでしょう。お嬢様が、力を使わない限り、安心でしょうし」
「それは、アルゼス様の感ですか?」
「ご想像に、お任せします」
「後から、アルザリ様に、怒られませんか?」
そうきますか。
確かに、兄は…。
嫉妬深いですが、無害な者に手を掛ける様な馬鹿な真似はしない。
でなければ、お嬢様との契を、許すなんて有り得ないですから。
手から零れ落ちるモノを手に入れた時、人は、優越感に浸りたくなる。
「ルィーアインでもあるまいし、無闇に、剣を抜いたりしないでしょう。アチラは、冥界王族。此方は、魔界貴族。お互いに、立場を弁えているつもりですよ…。良いじゃないですか、忘れらし、王族『グラーデン』。現代で言えば、人間国宝になれる」
「言われれば、アチラの一族は、少しばかり特殊な血筋でしたね。『フリア』の血を引いていながら、名乗らせてもらえない。ブェルブニの皇女様を振ったとか…」
ま、それが、原因で、今だに、根に持たれています。
根性あると思いましたよ。
お嬢様の叔母様を、振るとは。
ともだちにシェアしよう!

