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あれは、魔界で一気に広がりましたからね。自尊心が高い彼女にとっては、許せなかった。
流石に、姪っ子にも言付けをする意味も解ります。
しかし、アズイ卿は違った。とても、賢明な判断をなさる。
「彼の父親は…勇敢ですね…」
「あ、だから、アルザリ様は、笑っていたのですね」
嫉妬深い兄が、初めて、男に興味を示した。
それも、冥界王族の皇子に。
私は、碁盤を見ながら、笑ってしまう。
鳴呼…。
どうりで、お嬢様は。
「アルゼス様?」
不思議に思ったのか、カミューが、首を傾げる。
「否、失敬。思わず、楽しみが、増えたと思いましてね…」
それなら、やはり、彼は、駒から外すべきだ。
キング、クイーン、ビジョップ、ナイトの何方かと聞かれればアズイ卿は、ナイト辺りが、位置的に正しいと思っていました。
けれど、ビジョップもいけるのかと考えたのですが彼女は、古の因縁に、彼を巻き込む気は無い。
なら、檻の中でのチェスから外さないと、怒られてしまう。
これは…。
楽しみですね。
久しぶりに、私も、心を擽られます。
「アルゼス様、お嬢様を呼び戻さなくって宜しいのですか…?過去に行った息子を覗きながら、楽しんでいますよ」
「まだ、足を運ばないだけ安全ですよ。しかし…晩酌したくなりましたね…」
「えぇ」
「異界へ赴くのは、失礼に値しますから、戻す方法を考えて下さい…」
彼に向かって、私は吐いた。
想像している事は、解るだろう。
お嬢様を、異界から呼び戻す方法は、簡単だ。アルザリ兄様を使えば、早く戻って来ますし、機嫌が良い今なら、教えてくれるかも知れません。
古の神は、気紛れ且つ、楽しみは取っておく癖がああります。
この、魔界に来て、彼女は、御子達の生き様を映しながら、成長を楽しみにしている。
特に『暁の御子』は、あの娘と同じでしょうか。随分、目にしてませんが、お嬢様の企みにより、彼処へ、閉じ込められていると、把握出来ます。
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