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ふっと、聞こえて来た声に、思わず、はっとした。 随分…。 昔過ぎた。 -…その声を、忘れる筈がない。 「●●様、何故、魔界に」 それを聞いて、教えてくれないのを解っている。 きっと、あの人は、人差し指を口元に当てて、微笑みながら『秘密』と、言うのであろうから。 だが、彼は…。 何を思い出しているのであろう。 私が、閉じ込められているのを…。 楽しんでいないか。 「絶対、次の時代に行ったら、魔界へ、抗議をしに行ってやる!」 「おぉっ、威勢が良いな●●●…」 「五月蝿い、この、おたんこなす」 寛ぎながら吐く、彼に、ハリセンを喰らわせた。 呑気にも、程があるのだ。 此処が何処かも予想せず慣れてしまって。彼女の手の内と、解りながら、時を待っている様にも思えるけど、コイツの場合は『果報は、寝て、待てだろう』と言う。 それにしても…。 アチラで、私の話をする機会があるのだろうか。 西暦的に、天地開闢が始まる前あたりだろう。 時間は、解らないが、当たっていると思うのだが。なにせ、此処は、時間の感覚が理解出来ない状態。 だけど、アチラは、解っているからこそ、聞こえてきたのだろう。 ふっと、横目に彼を映す。 『一日(いちじつ)作(な)さなば、一日(いちじつ)食(く)らわず』という、言葉もあるくらいだ。 アチラの方々は、社畜の鏡だと思う。 -…見習って欲しい。 『それは、無理に等しいんじゃないんでしょうか』 あ。 「どうかしたか?」 すまぬ。 少し、寝ていろ。 『相変わらず、父親に似ていて、容赦が無い。ま、其処を私は、買っています』 突然、聞こえてきた声に、私は、躊躇わず彼奴を眠らせた。 此方の会話を聞かせてはいけない気がした。 「何用で、御座いましょうか。あの人は、此方に繋げる事を致しませんが…●●様」 何処から、覗いているのか、想像が付かない。

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