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『そう、威勢を張らなくても、食べたりしませんよ…』
久しぶりに聞くが、機嫌が良いのか。
しかし、私の身体は、強張ってしまう。
「ですから…」
声が、震えて、思うように、出ない。
『…樹が、何故、閉じ込めたのか解りますか』
「知りません…」
『貴女には、次の世界で、やってもらわないといけない事があります…。生まれた聖界が、懐かしいですね。●●●…』
どうして、貴方は、私に構うのだろうか。
幼き頃、一度、傷付けたのに。
それさえも、幼子の様だと、あしらうのだろうか。
確かに、私は、貴方よりも生きた年数は少ない。けれど、彼女の血を引いている。
「この空間は、あの人が作ったモノです。空気はあるものの、時間すら解らない世界なのです…」
『知っていますよ。樹が、創った場所は、立ち入り禁止の部分が多い…。だけど、それは…同時に、護る為でもあります…』
冷めた視線を感じた。
金色の双眸が、細まるのが解る。
半ば、呆れた感じな様な『仕方ないですね』と、含まれている表情が浮かぶ。
「何故に、貴方様は…」
やっと、出た言葉。
『-…少し、時間が出来たので、覗きたくなっただけです。虐めたくって、繋がっていないので、ご安心下さい。それより、今宵は、樹が、機嫌が宜しいのですよ…』
「…」
『そろそろ、聖霊界も、収穫祭ですしね…』
「●●様…」
頭を押さえたくなった。
あの人は、何を考えているのだろう。
時空の中に閉じ込められた御子は、思います。頼みます、どうか、穏便に、大人しくしていて下さいと。
きっと、切実に願っております。
聖霊界の、収穫祭。
嘗ての記憶が、甦ってくる。
恐ろしいまでに、聖霊王『オベロン』が、叫んでいた事を。
この時空の中で、思い出すとは、予想していなかった。
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