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残念ながら俺は一度狙った獲物は逃がさない主義。 逢ったのが一回で、初対面。 だけど…『逃げて良い』等と一言も言っていない。 「――…気色悪い、顔…邪魔よ」 「…」 忘れていた訳ではないが、俺今、一人じゃなかった。つい、名残惜しい彼の事を考えていたから彼女の存在を消していた。 彼女…。 否、恋人関係ではない。 寧ろ、恋人関係にもなりたくない。 こんなドが三付く腹黒女と…。 長い黒髪を優雅に靡かせ、切れ長の瞳は本当に俺を気色悪いといった色で顕している。 「お前が相談したい事があるって言うから…来てあげたのに、その態度は何かしら?」 周りに黒い気を漂わせ、首を傾げる。 顔は可愛いってより綺麗系に近い彼女は、俺の従姉だ。 こんな人を頼った自分が情けなく思うけど、彼の事を知るには情報網である彼女が一番。持つ物は従姉だよなって虫が善すぎる話だろうか。 ま、ドが三つ付く腹黒には変わりないけど…。 頼りになるお方です。 拝みたくなるくらい感謝したいのは山々だが、変態野郎と口から出るのは何故だろう? 俺の顔を見る度に吐くんだよな。 ー…従姉は。 お陰で小説の登場人物に危うく発言させようとしていた。 即、気付いたから良いが。あのまま書いていたら、奈篦みたいなキャラになっていた。

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