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ーーマンション・金字・二十六0号室
だだっ広い空間には白を統一した家具が置かれてあった。
男こと、この家の主である龍華 深李は晴天な空を眺めていた。マンション『金字』に引っ越してきたのは一ヶ月前。
その間に色々あったが、今は落ち着いた暮らしを満喫だ。
「…くしゅんっ」
嚔をすれば誰かが噂をしているという話を聞いた事がある。しかし、部屋の中だとはいえ薄着をしていたせいだと思う深李は自分を抱き締める様に体を温めた。
「ーー…平凡だ」
深李は幼少の頃から特殊な家庭環境で育ってきた。
一般人の暮らしに憧れを抱くのにも無理は無い。
彼常に『平凡』を夢に見てきた。
家系とか関係なく、平凡な生活を過ごしてみたいと思い立ち、一ヶ月前に行動として移したばかりだ。
ゆったりと、流れる時間が良いと思う…。
旧家の掟に縛られる事ないし。
何より、彼奴が口煩く怒鳴ってこないのが。
ー…幸せだ。
四十八にもなって。
自分の時間が出来るとは。
思ってもみなかった…。
このまま一般生活が送れたら、俺、嬉しいな。
夢にまで見た、ビバ!一人暮らし。
勇気振り絞って。
家出した甲斐があった。
母上様には悪いが…。
絶対に家に帰りたくない。
こんなエンジョイ出来るの初めてだ。
たっぷりと、優雅に過ごしてやる!!!
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