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思い返せば、彼が不幸体質だと自分で気付いたのは、小学生の頃だった。 度々、見知らぬ人に声を掛けられる事はあったが。その頃は大層、気にする範囲でもなかった。 小学生の頃、身で知るまでは…。 だからだろうか、四十八歳という良い年齢になっても、結婚は出来てない。 寄って来るのは女性じゃなく男性。しかも何故か、皆、尻を狙ってくる。 最も深李自身は完全なノーマルであり、健全な男だ。 ただ、出逢う先々で男性率が半端なく多いだけの話だと、最初は片付けていたけど、最近では逆に男性と遭遇する確率が頻繁過ぎる事を不可解に思い始めた。 それを知る羽目になったのは、つい、この間の話である。 厄年過ぎたのに、厄が来る…。 正にそんな感じがしてならない。 「…おぇっ」 思い出すだけで、この有り様だ。 深李の中で拒絶反応を示した。 久しぶりに吐き気を伴う。 爽やか青年の皮を被った男だったのを思い出した。 周りは気付いていないだろうが、俺の直感は叫んだ。 ー…コイツ、危ない! 何で、厄年過ぎた後に変な男に目を付けられたかは解らないけど。 おかしいな…。 日頃の行いは良い筈。 何処で、露点がズレたんだ? そんな要素を含んでいる素振りは一切無かった。 あの日の光景を反芻しながら、彼は考え始めたのであった。

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