艶やかな黒髪を靡かせながら、サファイア色の双眸が細まり、俺を映す。 『そろそろ…足掻くのを止したら、どうじゃ…』 「けっ、誰が貴様の言いなりになるかっ」 『不躾じゃのぅ…。今世しか生きていない小童が。龍華家の風上にもおけぬ…』 「そう思うなら、俺に付きまとうなっ！龍華家なんて…うんざりなんだよっ！！！」 何が、海龍を祀る家系だ。 ー…なにが。 掟だっ。 俺は、窮屈な生活が嫌で出てきた。 今更…。 彼女が拘る必要性もないだろう。 『はぁ…。相変わらず、精進しない。ソナタが必死に虚勢を張った所で無意味だというのに…。少しは、学ぶ子とじゃの。家系の、歴史とやらを。そこに携わる者の事を。そして、何より、己の宿命とやらを一番、学ばなければな…』 皮肉たっぷりな科白を残し、彼女は消えた。 前々から思っていたが…。 彼女は『姫』と同類な感じがしてならない。 鳴呼、同じ匂いがするんだ。 あの、低身長、ド腹黒、ド鬼畜女！！！ それが、俺の母親…。 ー…龍華 志龍。 この世の闇を持っている、黒い根元。 息子に、自分が書いている小説の朗読をさせる女性である。 あくまで、趣味の範囲。 自分の性格を熟知しているから、質が悪いんだ。 彼方系の絡みは、小説の中でしていて欲しいのが息子の切なる願い。