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第五話:爽やかな二回り下の男は変態だった。
ーマンション・金字・二十六0号室
自宅で帰る道で、固まったままの深李は、逃げるという思考すら、彼の言葉により、奪われてしまった。だからか、部屋に着いた頃は、一瞬だけ、記憶が曖昧だった。
どうやって、帰って来たのかも解らず、目の前には爽やかな微笑みを溢す彼が、当たり前に寛いでいる。
一番知られたくない人物に住んでいる場所を知られてしまった事に脱力感を覚えた。
「清潔感溢れる部屋ですね」
「…そりゃ、どうも」
『帰れ』と追い返す力すら奪われた深李は、淡白に応える。
そもそも、彼が自宅近くのコンビニにいなければ、態々、知られる必要もなかった。否、元から持っている不幸体質が招いた結果なのだろうか。
彼と出会す事は、体質が呼び寄せた“不幸”…。
それなら、辻褄が合うというものだ。
一人、首を縦に振り、納得する。
でなければ、今の状況を説明するのは難しい。
俺的には。
逃げられると思っていた。
だけど、痛い所を付いてきた時点でアウトだった。
彼処で…。
『身分証明書』と出してきた奴が悪い。
俺を固まらせる一撃だった。
言うなれば、必殺技を出す前に攻撃された様なショックが、いきなり襲ってくる感じだ。
コイツ…。
何時の間に、俺の倒し方を覚えた。
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