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ー龍華家・庭
「奈篦様は、お帰りになられたのですか?」
黒いスーツに身を包む、長身の男性が椅子に座って、庭に植えられている桜の木を眺めている女性に尋ねた。
「えぇ、彼女も忙しいですからね…」
黒く、長い髪が風に吹かれる。
「…」
「倉科…」
「はい」
「今年で、幾つになった?」
本当の年齢を知っている癖に。
志龍様は、意地が悪い。
「今年で、数えて、四十八になります。深李様と同じ年齢で御座います。志龍様」
男性こと倉科は微笑みながら答えた。
三十代半ばに見える彼は、女性の息子と同年代だと言う。
深李様が童顔なら、私は容姿が若く見られるのでしょうか。
なんて、疑問を問いかけてみる。
これが…。
彼と女性の息子の凄い所であった。
『倉科』は『龍華』の分家にあたる家系であり『鳴澤』と同じく、深い関係にある。
『龍華』の者は、大抵が『倉科』の者と契りを交わす。
どちらかが、女を産めばの話だが、残念ながら『龍華』も『倉科』も男しか生まれなかった。
それが、彼女の横に立っている倉科 海凰と只今、家出をしている息子、龍華 深李である。
世に云う、許婚同士なのだ。
お互いに解っていてこれなのだから、この先が思いやられる。
何せ、彼女の息子は。
ちょっと、強情な部分があり、落とすのは至難の技だ。
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