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男子が生まれた以上、どちらかが他者と交わるか、女役になるしかない。
生憎、海凰の場合は、彼方用語で言う“ネコ”という立場は似合わないのを彼女は知っている。
この際、息子が女役になる事は決定付けられた。先ほど、鳴澤家の『姫』が言った言葉により困難になった。
鳴澤家の直系が息子に目を付けた事で、海凰の嫁として差し出すのは到底不可能に近い。
「そう、深李と同じなのね」
紅茶から日本酒に入れ替わっていた事に気付いた彼女は、お猪口に酒を注いだ。
「飲みたいだろうと思い、用意しました…」
今日の日本酒は特別に取り寄せた『腰古井』だ。
辛口好きな志龍様の口に合う筈。
男性は、軽くお辞儀をし、彼女が口に運ぶのを確認した。
「倉科、貴方…深李が欲しい?」
「志龍様が承諾のサインを下さるなら、私は深李様を妻として娶りたく御座います…」
「…私としても、倉科家の者と契りを交わして欲しいと思うわ。けれど」
「鳴澤家ですか?」
首を傾げる彼は、女性が悩んでいる事が解った。
両家の関係性が関わっていると、そう簡単に動けないのは男性も理解している。
だからこそ、頭を悩ませるのだろう。
鳴澤家の『姫』も、随分と酷な物を投げていかれる。
志龍様が悩むのは…。
両家の安泰。
思わず、男性まで溜め息が漏れた。
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