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なんて、ちらりと、見て思った。 自負をしているつもりだが、自分まで指摘をされたら面白くない。 「年齢は二回り上なのに、童顔さが親父さを感じさせないのが良いですね」 「い、嫌味か…!」 「いいえ、褒めてるんです」 何処が、褒めているんだ。 他人から聞けば、十分、嫌味に聞こえるぞ。 「俺は、どうせ…身分証明書と一生友達だ…」 「深李さん、それ、無意識ですか?」 「はっ」 「ですから」 目の前に座っていた彼が椅子から立ち上がり、俺の視界を遮った。 「無意識ですか?と、聞いたんです」 「ななななっ…」 突然の事で、状況が把握出来ず、テンパる自分に対し、爽やかな笑顔を振り撒く彼、鳴澤 克樹という男は、再び顔を近付けてきた。 「…キス、初めてでした?」 四十八年間、一度も関係を持った事も無い俺。 人生初の甘い瞬間というのを味わうのは夢見ていたけど、それを、男に、しかも、二回り下の相手に打ち砕かれるとは。 鳴呼、俺のファーストキス!!! 思わず、瞳をパチクリパチクリと、瞬きを繰り返した。 触れるか、触れないかぐらいの感触があたった時点で、唇だと気付くのに時間は掛からなかったが。 コイツ…。 爽やかな笑顔を保ちつつ、キスするなよな。 どんな特技を持っているんだ!!!

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