37 / 117
5-3
彼女に視線を向ければ、呆れた眼差しを向けられ、自分の失態が恥ずかしくなった。
『あぁ、この香りを例えるなら、カサブランカ。甘い匂い』
「カサブランカって、百合の王様と言われていて…。『高貴』の意味も持っている花、だよな…」
『…そう』
霊体でも鼻が利くのか?
否、犬並みに利くな。
霊事態が俺の匂いを『甘い』と言うぐらいだ。
事実、甘いのかは解らないけど。鼻をクンクンさせている。
よって、霊体である彼女も鼻は良いのだろう。
『ソナタ』
「な、何だよ…」
『いや、何でもない』
「おかしい奴。毎日、俺の前に現れては色々、言っているくせして…」
急に黙り込んでしまうとか今まで無かった。毎日、小姑みたく、ブツブツ小言を言ってくるのが、当たり前なのに。
途中で言わなくなるとか彼女らしくない。
余計に引っ掛かるじゃないか。
そう、言葉を止められたら。
俺の性格を知っていて、彼女は黙っているのだから意地が悪い。
そんなに気になるなら…。
匂いの原因を問い質せば、早いだけの話だ。
思い当たる人物が浮かぶかは解らないが、少なくともカサブランカの匂いが凄くヒントなのは俺だって解る。
だけど、花言葉のイメージにピンとこないんだよ。
百合の花って、清楚なイメージが高い。けど、どう、考えても、百合の反対だろう。
ともだちにシェアしよう!