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彼女に視線を向ければ、呆れた眼差しを向けられ、自分の失態が恥ずかしくなった。 『あぁ、この香りを例えるなら、カサブランカ。甘い匂い』 「カサブランカって、百合の王様と言われていて…。『高貴』の意味も持っている花、だよな…」 『…そう』 霊体でも鼻が利くのか? 否、犬並みに利くな。 霊事態が俺の匂いを『甘い』と言うぐらいだ。 事実、甘いのかは解らないけど。鼻をクンクンさせている。 よって、霊体である彼女も鼻は良いのだろう。 『ソナタ』 「な、何だよ…」 『いや、何でもない』 「おかしい奴。毎日、俺の前に現れては色々、言っているくせして…」 急に黙り込んでしまうとか今まで無かった。毎日、小姑みたく、ブツブツ小言を言ってくるのが、当たり前なのに。 途中で言わなくなるとか彼女らしくない。 余計に引っ掛かるじゃないか。 そう、言葉を止められたら。 俺の性格を知っていて、彼女は黙っているのだから意地が悪い。 そんなに気になるなら…。 匂いの原因を問い質せば、早いだけの話だ。 思い当たる人物が浮かぶかは解らないが、少なくともカサブランカの匂いが凄くヒントなのは俺だって解る。 だけど、花言葉のイメージにピンとこないんだよ。 百合の花って、清楚なイメージが高い。けど、どう、考えても、百合の反対だろう。

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