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ちらりと、彼女を見上げれば、優しい微笑みを浮かべた。 手は、頭から退けられる事なく、撫でている。ブスッと、むくれた頬を、もう片方の手が触れた。 『拗ねるな。特殊な人間との接点を何処で作ったかは知らぬが、相手はソナタを陥れる輩ではない。安心して、親交を深めれば良い。ずっと、温室育ちだったソナタには生身の人間との付き合いも大事だ。相手に利害がないのだから、妾から避ける様、仕向ける必要性がない』 「多いに問題だ。アイツ、キスしてきたんだぞ…!!!」 『ほ-っ』 サファイア色の双眸が細められた。 今更ながら、怖じ気ついている自分。 仮にも、彼女は神の類いの存在。 修行不足だとはいえ、尋常じゃない神力は感じられる。 現れる度に、気分を悪くするぐらいの影響が身体にくる。それぐらい、彼女の神力は、俺の感覚全てを侵していく。 言わないでおこうと思ったのに。 俺とした事が…。 ー…失態。 奴にキスされた事を話した瞬間、空気が冷たくなったよ。 蛇に睨まれる蛙という状態って…。 今の感じを言うのかな。 彼女の瞳が正に、そうだ。 そして、俺は池でケロケロと鳴いている蛙。 怖くて…。 固まってしまう。 だけど、一瞬たりと隙を許さない。 最早、狙われているのと同じじゃないか。

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