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【克樹side】
一歩、前進した。
確かな確信があるのは、間違っていない。
『龍華家』の御曹司であり。
“龍”という特別な深李さんと、ほんの、ほんの少しだけ、近付いた気がするんだ。
お家柄上、規律が厳しいのも解っているし。況してや、男同士という欠点が、あるのも事実だ。
それでも、五日前の出来事は、俺にとって、甘い一時だった。
心から欲しいと、思って、何が悪い…。
世の中には、男同士という壁は高く、モラルが存在するのは、知っているけど。香水を、たんまり付け、厚化粧している女性よりも、俺は、龍華 深李という男性が断然に良いのだ。
心底、惚れてしまったのは、仕方ないじゃないか。
見せる仕草や、無意識に、人を煽る表情が堪らなく、愛しいと、感じてしまう。
重症なのは、承知済み…。
あの天然な深李さんを。
どうしようかと、頭の中で、妄想を繰り返しては自我が『駄目だ』と、訴える。
そのお陰で、発狂せずに済んでいるのは確かだ。
しかしながら、この、欲求は抑えられない。
爆発する前に…。
何とか、結び付きたい。
こんな姿の俺を、深李さんが見たら、呆れるだろうな。
先程の、夫婦みたく。
呆れを通り越して、貶ししか残っていないという。
もしかしたら、惚れてもらえないかも。
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