51 / 116

6-7

【克樹side】 一歩、前進した。 確かな確信があるのは、間違っていない。 『龍華家』の御曹司であり。 “龍”という特別な深李さんと、ほんの、ほんの少しだけ、近付いた気がするんだ。 お家柄上、規律が厳しいのも解っているし。況してや、男同士という欠点が、あるのも事実だ。 それでも、五日前の出来事は、俺にとって、甘い一時だった。 心から欲しいと、思って、何が悪い…。 世の中には、男同士という壁は高く、モラルが存在するのは、知っているけど。香水を、たんまり付け、厚化粧している女性よりも、俺は、龍華 深李という男性が断然に良いのだ。 心底、惚れてしまったのは、仕方ないじゃないか。 見せる仕草や、無意識に、人を煽る表情が堪らなく、愛しいと、感じてしまう。 重症なのは、承知済み…。 あの天然な深李さんを。 どうしようかと、頭の中で、妄想を繰り返しては自我が『駄目だ』と、訴える。 そのお陰で、発狂せずに済んでいるのは確かだ。 しかしながら、この、欲求は抑えられない。 爆発する前に…。 何とか、結び付きたい。 こんな姿の俺を、深李さんが見たら、呆れるだろうな。 先程の、夫婦みたく。 呆れを通り越して、貶ししか残っていないという。 もしかしたら、惚れてもらえないかも。

ともだちにシェアしよう!