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第八話:幽霊と僕、どちらに犯されたいですか?

【海凰side】 随分と、手こずらせのが、お上手の様だ。 龍華家の“龍”である深李様は…。 私は、とあるマンションの下から、住んでいるあろう場所を見上げていた。 家出をして一ヶ月間、静かに隠れていた様子だが、それも、今日で、終止符を打つ。 「手間をかけさせるのが、相変わらず、得意な深李様だ…」 右手に持っていた資料を、ライターで火を着けて燃やす。 灰になった紙は。 パラパラと、風に乗り、散って行った。 死んでいる人間なら、何度でも、祓ってやるが。 生身の人間まで引き寄せてしまうのは、許せません。 悪い虫が付かない様に、慎重な行動を起こしてきた私の苦労が水の泡というもの。 恋愛の一つすらした事がない彼を、配慮して、距離を保ってきたつもりですが。 志龍様が命令した以上、私も遠慮するのを、止める事にした。 善良な男性を演じるのも、結構な疲労困憊で。 性に合っていなかったので、良い機会ですね…。 この際、手段を選んでいる場合じゃないと思った。 何処で…。 鳴澤家の若君と逢ったのか、解らないけど。 お仕置きが必要な様です。 とりあえず、ソフトな方から始めるのが基本。 深李様が、泣き叫べば良いだけ。 家を出た事を、多いに後悔さえしてくれれば、それは、何とも言えない優越感に変わる。

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