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「意外に、早いわね …」 ふんわりとした微笑みを浮かべ、柱に凭れていた女性が立っていた。 煽ったくせして。 余裕綽々な表情が彼をイラっと、させる。 「調べる事は、調べ尽くした。これ以上、何を探れと言うんだ」 「あら、お前の本気とやらを知りたかったのよ。詠清さんが言いたかったのは『生半可な気持ちで…。龍華 深李に関わるな 』という事よ?お前は、状況を解っているのかしら。『龍華家』の者が『倉科家』の者と契りを交わすのが、掟とされている以上、勝ち目が無い事を…」 「…」 「その、様子だと、知っているようね…」 業っと、調べさせた。 彼女も、夫である男性も、彼に事の重さを知らしめたのだ。 「ー…奈篦、覚えてろよっ」 捨て科白の様に吐き捨て、その場を立ち去る。 後ろ姿を眺めていた女性は…。 「ふふっ、あはははは…ダメっ!!!我慢してたけど、やっぱ、無理よっ、くふっ…」 背中が見えなくなると、憎みを含んだ科白を言うのが、精一杯だった筈。 とことん、苛め甲斐がある素質がある従弟。先ほど、旦那である男性に『苛めないであげて?』と、言ったが、撤回しよう。 あんな様の彼を弄らないで、誰を弄ると言う。 勿論、従弟である、克樹だ。 その他は…。 認めない。 彼女は、笑いながら、新しい悪戯を考えていた。

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