60 / 117
7-3
「意外に、早いわね …」
ふんわりとした微笑みを浮かべ、柱に凭れていた女性が立っていた。
煽ったくせして。
余裕綽々な表情が彼をイラっと、させる。
「調べる事は、調べ尽くした。これ以上、何を探れと言うんだ」
「あら、お前の本気とやらを知りたかったのよ。詠清さんが言いたかったのは『生半可な気持ちで…。龍華
深李に関わるな 』という事よ?お前は、状況を解っているのかしら。『龍華家』の者が『倉科家』の者と契りを交わすのが、掟とされている以上、勝ち目が無い事を…」
「…」
「その、様子だと、知っているようね…」
業っと、調べさせた。
彼女も、夫である男性も、彼に事の重さを知らしめたのだ。
「ー…奈篦、覚えてろよっ」
捨て科白の様に吐き捨て、その場を立ち去る。
後ろ姿を眺めていた女性は…。
「ふふっ、あはははは…ダメっ!!!我慢してたけど、やっぱ、無理よっ、くふっ…」
背中が見えなくなると、憎みを含んだ科白を言うのが、精一杯だった筈。
とことん、苛め甲斐がある素質がある従弟。先ほど、旦那である男性に『苛めないであげて?』と、言ったが、撤回しよう。
あんな様の彼を弄らないで、誰を弄ると言う。
勿論、従弟である、克樹だ。
その他は…。
認めない。
彼女は、笑いながら、新しい悪戯を考えていた。
ともだちにシェアしよう!