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第九話:身長差が物を言う時代のハズ。
ー鳴澤家・ライラックの間
空を見れば、太陽が沈み。辺りは、静寂さが漂う闇夜に包まれていた。
出掛けて行った従弟の行き先は龍華 深李の所だろう。
苛々している所を見れば、真実でも確かめに行ったのか。しかしながら、本人に、酷な話をしてしまうのだろうか。
闇夜に浮かぶ満月を眺め、彼女は息を吐く。
「君が、大笑いするのを初めて聞いたよ…」
「自分でも初めてで、驚いているわ。あの子の表情見たら、居ても立ってもいられなくって…。つい、ね」
夕方頃、鳴澤家では、女性の大笑いが響き渡っていた。
それも…。
盛大な大笑いであった為、世話係が驚いたそうだ。
普段から、おしとやかに振る舞っている彼女の印象を遥かに変える出来事だった。
無論、報告を受けた男性も内心は驚きを隠せないでいる。
若君の顔…。
そんなに、面白かったのだろうか。
私も、運が良ければ。
ー…拝めていたかも知れない。
そんな事を悠長に思いながら、彼は女性の方へ、視線を向けた。
静かに訴える様に、視線を合わす彼女は、男性が少し残念な気持ちなのを知っている。
きっと、見たかったに違いない。
従弟の怒りを含んだ顔を。
あれは、早々に見られる顔じゃない。時と時間と場所が揃わなければ、遭遇出来ない貴重な表情だと思った。
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