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一生懸命、威嚇したつもりなのだろうか。痛くも、痒くもない。 反対に言えば、十代の子供が必死に、虚勢を張っている感じだ。 彼女の中の嗜虐心が従弟を、ひいひいと言わせたい衝動に、狩られていた事は誰も知らない。 秋風落漠(しゅうふうらくばく)…。 そんな言葉が脳裏に過る。 陶然、有言実行とは、女性の為にあるもの。 「…顰蹙(ひんしゅく)よね」 恋は盲目とは言う。 猪突猛進な従弟は、思い立ったら、行動に起こさなければ、気が済まない質。龍華 深李を恋人にするまで挑みまくる。 不可能という言葉を知らない世間知らずな部分が、そうさせているのかも知れない。 だから、真っ直ぐ、進むしか、出来ないのだ。 「…」 「くっ…。ふふっ…」 「な、奈篦?」 「思い出したら…っふ、くふ…あはははは…ダメダメ…っ…っ…」 突然、何を思い出したのか、彼女は笑い出した。 その…。 光景が、異様に妖しい雰囲気を。 醸し出している。 男性は、大きく目を開きながら、女性を見つめた。 何が、刺激したと言うんだ。 少し…。 困る。 私的には、詳しく説明をして欲しいのですが。これは、暫く、無理だと判断した。 完全にツボに嵌まった彼女は、涙目になりながら、従弟の顔を浮かべては、消すという器用な事をしていた。

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