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第十話:デザートとはナニご?(奈篦side)

ー鳴澤家・庭 上機嫌な表情は、気色悪いけど。不機嫌に不機嫌を重ねて、執筆している姿は、気持ち悪い。 あの日、逢いに行った筈なのに、何故か、無愛想だった。 帰って来るなり、書斎部屋に籠るやら、今日みたいに庭で、ノートパソコンを開きながら、作業しているやらの繰り返し。 龍華 深李の名前を出した途端、凄い睨みを利かすし。 一瞬、失恋でもしたんじゃないかと思った。 失恋して、玉砕して。 だから、小説の執筆に没頭しているんじゃないかと。 「集中力、半端ないわ…」 かれこれ…。 八時間ぐらい経つんじゃないかしら。 一向に、手を止める事なく、カタカタと、文章を打ち込んでいる。 「デザートとは、ナニご?」 「…へっ」 「ですから、デザートとは、ナニご?」 唐突に、詠清さんが、変な事を聞いたもんだから、拍子抜けな声が、私の口から漏れる。 急な事で、頭が付いていけないわ。 詠清さん、克樹を見ながら吐いているあたり、恐いんだけど。 けれど、現にさっき、デザートを作っていた気がした。 克樹用に、作ったのかしら。 それとも…。 糖分を摂らせようとしたのかしら。 だとすれば、今は、大人しくしていた方が良いかも。 あの様子じゃ、詠清さんの作ったデザートを口にするかどうか解らないもの。

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