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気付いた彼は、微笑みつつ、歩み寄って来た。鈍感な克樹は、察知したのか、キーボードを打っていた手を止める。
「詠清さん、嫌がらせですか。奈篦に、変な質問を与えて…」
「嫌がらせじゃありませんよ。私は、彼女に『デザートとは、ナニご?と、聞いてきて欲しい』と、お願いしたまでです…。若君は、丁寧に、説明した様ですが」
一つ、物足りない感じで言う。
「…」
「十六世紀頃には“コースの一部”として、提供されていたのがデザート。つまり、全てを片付けて、お出しする訳なのですが、この様じゃ“食後”のデザートは、置けませんね」
ねぇ、それ、親父ギャグなの?
デザートとは、ナニご?とは『何語』じゃなく『食後』というギャグなの?
敢えて、韻を踏んだのは、親父ギャグの一貫を体験したかったとか。
とても、言いにくいけど…。
ー…寒い。
優しく、物腰が柔らかい夫だけど、この時ばかりは。
共感してあげられないわ。
何の風の吹き回しで、親父ギャグに挑もうと、思ったのかしら。
その前に、今日のデザートに関係しているんじゃないかと、予測していたけど、寒気が消えない。
詠清さんの、恐ろしい…。
ここまで、絶対零度のギャグを飛ばせるのは、世界を探しても、私の夫、詠清さんだけ。
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