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【奈篦side】 部屋に戻れば、志龍が、お茶を飲んでいた。 滅多な事がない限り、鳴澤家に立ち寄る事もしない彼女。 単に、克樹を拝みに来たという感じでもない。 何て言うのかしら、胸に、つっかえている様な感覚がある。 「志龍様は、若君で何を証明したいのですか?“龍”の能力を引き出すなら、倉科 海凰でも十分じゃありませんか。なのに、若君の顔を見に来たという理由は、辻褄が合いませんよ…」 「理由?理由、ね」 湯呑みをテーブルに置き、考える素振りを見せる。 「はい…」 「海凰は深李を嫁として欲しいと、思っているわ。私が、承諾さえすれば、直ぐに結婚をするでしょうね。正直…。龍華家と倉科家の安泰になる。光栄な事だと思うわ。けれど、先ほども言った様に深李の心を一番、尊重しているのよ」 志龍、そこが気になるのよ。 何で…。 思い耽りながら、話しているのか。 確かに、私と貴女は賭けをした。 だけど…。 結果的に見えているんじゃないかと、思えてくるの。 だって、志龍の周りに『良い餌、見つけた』という字が、リアルに出てきている。 ー…最初は。 顔だけじゃなかった? 何、ニコニコルンルンな顔が浮かんできているの!!! そして、吹き出しに『良い餌、見つけた』と、漫画みたいな状態が出来上がっているわよ。 かの有名な小説家さん。

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