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一つの事で悲しくなってきたのは、今日が一番かも知れない。
鳴澤 克樹にキスされた事より、母親に写メを送られた方が、ダメージが大きい。
ぽっかり穴が空いた空虚感が何とも侘しさを残す。
「お前さ、俺を、どうしたいの…」
「嫁にしたいです」
「却下。俺は、完全なノーマルだし、未知なる世界を味わう勇気はない。龍華家と倉科家の掟だからと言って、幼い頃から、ずっと一緒に居るお前に…。恋心とか抱ける自信もない。逆に、倉科が虚しくなるだけだ…」
「鳴澤 克樹には、渡したくないです」
超絶残念な親父…。
そこで、彼の名前を出してくるかな?
「…渡す、渡さないの問題じゃないだろう。俺は、物じゃない。人間なんだ。倉科は、その辺を、解っていない気がする」
可笑しいだろう。
『渡す』だの『渡さない』だの。
じゃあ、物々交換ってか?
物じゃないんだ。
人間なんだ…。
俺をお互いに引っ張り合いっ子するなよな。
それじゃあ、子供が嫉妬してやるアレみたいだ。
ま、頭の中では理解しているんだろうけど。
海凰にしては、大人気なさすぎる。
何処で張り合っているのやら…。
俺だったら、声を使って、ライバルをやつっけるだろうなと、何とも呑気な考えが浮かぶ。
否、絶対に這い上がれない様に潰しに掛かっている。
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