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奈篦や詠清さんにじゃなく、俺と話す? ちらりと、視線を二人に向ければ、顎で座る様、促された。 話があるなら座るしかない訳で、急須から湯呑みにお茶を注ぐ。 「話とは、何でしょう…?」 「深李の事です」 「…」 「既に、海凰とは、お会いになっておりますね。龍華家は、倉科家の者と契りを交わすのが、義務付けられています…。但し、女性の場合のみですが。両家に男児が生まれた場合は…。他者と交わるか、どちらかが女役をやるかの、二つしかありません。本来なら、深李は海凰の嫁として見なすべき存在。けれど、鳴澤家の御曹司、つまり貴方が深李に、一目惚れした事により、白紙の危機が迫っています」 確信を突きに来たのか。 俺が深李さんの家に行った時、倉科 海凰は、その場に居た当事者。 連絡が回っていないとは思っていなかったけど、直球を投げられると投げ返すのは難しい。 一目惚れした事は、事実だし。 今更、隠したとしても、従姉夫婦が証明してしまう。 だとしても、好きな人の母親を目の前にして、何を話そうか困る。 何故、惚れたのかを細かく話せば、彼女は納得してくれるだろうか。 いいや、それだけじゃ満足しないだろう。 俺の真意を知りたいに違いない。 でなければ、この異様な空気は流れたりしないと思う。

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