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ふっと、倉科 海凰の科白が浮かばれた。 彼も深李さんの身を案じていた。特殊体質な上 、引き寄せてしまうのは死者が殆ど。 時には遺恨を持つ霊もいた筈だ。 それ等を祓い除けていたのかは、各いう倉科 海凰という男性。 「家出をした事は、成長の証だと思っていますのよ。ずっと…温室育ちだったあの子が初めて起こした小さな反抗です。母親として、嬉しくない訳ではありません。きっと…貴方と出逢ったのも運命なんでしょうね…」 「…」 「だから…敢えて、私から…あの子の母親として聞きたい事があります…」 目元を緩め、優しい表情で女性は、俺を見た。 「はい」 「鳴澤 克樹殿…。貴方は、深李と、本気の恋愛をする覚悟はありますか?よく、お考え下さい。一生の問題です。今までみたいに恋愛ゲームでは済まされませんよ。深李は、龍華家にとって、特別な存在である“龍”です…」 龍華家にとって、特別な存在。 俺にとっても、特別で、愛しい存在。 十代の頃みたく、遊びの恋愛をする年齢じゃないのは、自分自身でも解っている。 尚更、深李さんが許したりしないのを俺は直感的に感じた。 なので、俺も彼の意志に従うべきなんじゃないかと、思い始めてきた。 恋愛初心者と恋愛する訳なのだ。 何時までも、逃げていてはいけない気がする。 深李さんと…。 一緒に、本気の恋愛をしてみたい。 俺は、心の中で、そう呟いた。 最初は躓くだろうけど、其処はお互いに手を取り合っていけたら良いな。 なんて…。 少し、照れ臭くなった。 彼女が言う様に、至難があるのも理解している。 その、部分を二人で越えていきたいと、改めて、確認させられた感じがした。 ー…もう。 心は、決まっているじゃないか。 好きな相手と、恋愛を楽しむのがベストだと。

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