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あの雨の日、俺は見つけてしまった。大雨が降る中、傘もささず、びしょ濡れな男性を。 普段なら、無視する筈だった。 でも、無視できなかったんだ…。 上げられた顔を瞳に初めて映した時、何故だか、込み上げてくるお想いがあったから。 「…俺は、その気で、深李さんにアタックしているつもりですが?ノーマルな相手を落とすのは難しい事だと解っております。しかし、好きになっちゃったんだから仕方ないじゃないですか。生まれて初めて、心から欲しい存在だと、思ったんです」 欲しいよ。 深李さんの身体も心も。 一方的なお想いだと、知っている。それでも、諦める気はないし。 振り向かせるつもりで挑んでいる。 「安心しました。奈篦、良い従弟をお持ちですね」 「そう?ド変態野郎よ?」 ド変態は余計だ。 「若君が、ゲームと言ったら、存分に貶して、二度と深李と、逢うのを禁じて。海凰に『手取り、足取り、腰取りを実行しろ!』って、言うところでしたわ…」 ー…恐いです。 何か、後ろに黒いのが漂っているんですが。 ド腹黒夫婦は平気みたいだが、やはり類は友を呼ぶからだろうか。 平然としているのが、逆に恐怖を煽る。 俺、危うい発言をしなくって、良かったと、思う。 これで、ゲームと言った瞬間、俺の初恋は玉砕どころじゃなくなる。 もう、立ち直れないくらい、ドン底に落とされているに違いない。深李さんを倉科 海凰に取られるとか、そんな事は、あってはならないのだ。 深李さんの初めては、俺がいきたい。 俺じゃなきゃ、駄目だと、身体に叩き込みたいのだ。 よって…。 『手取り、足取り、腰取り』は、自分が教える事にする。 誰が、他の男にさせるか!!! 深李さんの尻は、俺の。 これに関しては…。 奈篦に、変態扱いされても文句は言えない。 事実、深李さんの尻を狙っていますから。

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