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ゲームとは、絶対に口にはしない。 倉科 海凰に深李さんの可愛い尻のバージンを奪われたら、俺、泣ける。 安堵して、口からほっとした息が漏れた。 「後々、大変な事になる。早めにケリを付けないとって、思っていたけど。有り難く思って下さいね、若君。海凰は深李に、あっさり、振られてしまいましたから…」 「へっ」 「同じ様に育ってきた相手を恋愛視するのは、出来ないんですって。渡す、渡さないとか、掟に義務を感じている奴を好きになる程…。柔軟な心は持ち合わせていないそうです…」 深李さん、ばっさりいきますね。 俺でも立ち直れない自信がありますよ。横にいるドス黒夫婦レベルの性格を持ち合わせた彼を振るとか。 「まぁ、若君が近くに居れば、厄落としぐらいは…」 「志龍様」 「いやぁね、誰も厄避けでって、意味じゃないわよ。ロリコン…」 「ロ、ロリコン?」 うわぁ、意外に肝が据わっている。 詠清さんに『ロリコン』って…。 首を傾げている彼は、女性の言葉に、クエスチョンマークを浮かべていた。 それは、急に『ロリコン』と言われたら、疑問に思う。奈篦は、立派に二十歳過ぎている大人の女性だ。 どの辺りがなんて問いても、多分『容姿の問題』と言うんじゃないのだろうか。 つまり、詠清さんと奈篦が歩いていたら、夫婦には見えない。 親子にしては、親し過ぎる。 故に『妻です』と、紹介した時に、皆に驚かれるタイプだ。 プラス、年齢を聞いたら、更なる話題の波が吹き上がる。 年齢差を追及してくる者も居る訳だ。 だけど、二人の餌食になった時に…。 俺は、相手を哀れに思うだろう。 深く追及さえしなければ、落とす事の無かった命だったのにと。 家の者は、思っていても、口には出さない。 それが、暗黙の了解だと知っている。

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