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「…生まれ変わってから、聞いてみる事にしますよ」 バツが悪い顔で、彼女は答え、何事も無かったかの様に立ち上がる。 「…」 「そう、ね。生まれ変わったら、私の何処を好いてくれたのかを聞いてみたいわね。昔は、若過ぎて、気恥ずかししかったですし…」 まるで、自分に言い聞かせる様に、呟くのであった。 「そういえば、先ほど、海凰から…写メが送られてきたのだけど、送り先を間違えたのでしょうね。件名が『活きの良い真鯛の頭はナニ専用』とか、書かれてあったわ…」 「ちょっ、それ」 「海凰の『面白い事を思いついた』よ…」 「…っ」 何をさせているのだろう。 ギャグにしても、これは酷い気がしてきた。 「…被害者続出な理由が解ったわ」 パカッと、開かれた携帯に写っていたのは、全裸で、刺身を身体に盛られた深李さんだった。わなわなと、沸き上がる黒い感情。 大切な一物には、件名通りの真鯛の頭が、添えられている。 これが世に言う『女体盛り』の男バージョン。 だとしても、倉科 海凰は、深李さんで何を確かめたかったのだろうか。 ツッコミ満載な所は沢山あるけど、何処からツッコンで良いのかも解らない。 しかも、一物に真鯛の頭って、どうよ。 発想が豊かなのは良いが。 あの後の処理を考えないのだろうか。 俺だったら、美味しく、深李さんと、刺身を堪能する。 無論、真鯛の頭が付いている一物も、食べて、ほろ苦い味を存分に頂く。 深李さんの蕩けた表情を見ながら…。 お酒を煽るのも悪くない。 もしかしたら、深李さんから『克樹』と。 誘ってくるかも。 なんて、甘い期待が出てくる。 それよりも、この感情を何処に突っけるか、考えないといけない。 このまま逢う訳にもいかない。 彼には、紳士的な姿で逢わないと。

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