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12ー11
そういや、寄ってくる人間は、彼方系の方が多いと、言っていたっけ。
恋愛に遍歴があり、尚且つ、上に立つ存在。深李さんなら、あの、フェロモンで、寄せ付けそうだもんな。
なんたって…。
「ー…無自覚、無意識、天然」
俺の発言に、度肝を抜かれた女性は、瞳を大きく開き。
「よく、ご存じで…」
優しい口調で言った。
存分に知っています。深李さんのアレは、自然な事で。本人、全く自覚していない。
だから、周りがハラハラするのだろう。
四十八歳の大人が親族を含め、年下まで狼狽えさせる能力を発揮するのだから、息の根が止まるんじゃないかと、心配だ。
四苦八苦する想いを、此れから味わっていくのかと、考えただけで、頭が痛くなってきた。
深李さんに…。
ー…自覚を持たせるのは。
至難の技だよな。
心身共に、精進しないと…。
無自覚な天然さんには、伝わらないだろうし。
「悩んでいる姿が、お痛わしいや…」
「克樹も、春が来たのは良いけど、苦労するのを楽しみにしているわ」
そこで、詠清さんも奈篦も、哀れんだ視線を送らないでくれ。
「まぁ…深李が、粗相をしたなら、龍華家に連絡を入れてくれれば良いですわ…」
にっこりと、微笑んでいるけど、黒い。
龍華家の“姫”は、黒すぎて、俺は逆らえない気がしてきた。
「…多分、そこは大丈夫かと思われます」
「そういや、若君…深李の意外な特技って、知っていますか?」
「えっ」
「一度、耳にしたら離れられなくなるくらいファンが、多いんですよ…」
急に、質問されたので、ポカーンと、なった。
深李さんの意外な特技って、何!!!
耳にしたら、離れられなくなるという事は、歌が上手いとか?
確かに、声は透き通る感じで、綺麗だ。
寝惚けている時に聞いた声音は。
甘く…。
男の本能を疼かせる。
だから、この時、彼女が言った意味が解らなかった。
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