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そういや、寄ってくる人間は、彼方系の方が多いと、言っていたっけ。 恋愛に遍歴があり、尚且つ、上に立つ存在。深李さんなら、あの、フェロモンで、寄せ付けそうだもんな。 なんたって…。 「ー…無自覚、無意識、天然」 俺の発言に、度肝を抜かれた女性は、瞳を大きく開き。 「よく、ご存じで…」 優しい口調で言った。 存分に知っています。深李さんのアレは、自然な事で。本人、全く自覚していない。 だから、周りがハラハラするのだろう。 四十八歳の大人が親族を含め、年下まで狼狽えさせる能力を発揮するのだから、息の根が止まるんじゃないかと、心配だ。 四苦八苦する想いを、此れから味わっていくのかと、考えただけで、頭が痛くなってきた。 深李さんに…。 ー…自覚を持たせるのは。 至難の技だよな。 心身共に、精進しないと…。 無自覚な天然さんには、伝わらないだろうし。 「悩んでいる姿が、お痛わしいや…」 「克樹も、春が来たのは良いけど、苦労するのを楽しみにしているわ」 そこで、詠清さんも奈篦も、哀れんだ視線を送らないでくれ。 「まぁ…深李が、粗相をしたなら、龍華家に連絡を入れてくれれば良いですわ…」 にっこりと、微笑んでいるけど、黒い。 龍華家の“姫”は、黒すぎて、俺は逆らえない気がしてきた。 「…多分、そこは大丈夫かと思われます」 「そういや、若君…深李の意外な特技って、知っていますか?」 「えっ」 「一度、耳にしたら離れられなくなるくらいファンが、多いんですよ…」 急に、質問されたので、ポカーンと、なった。 深李さんの意外な特技って、何!!! 耳にしたら、離れられなくなるという事は、歌が上手いとか? 確かに、声は透き通る感じで、綺麗だ。 寝惚けている時に聞いた声音は。 甘く…。 男の本能を疼かせる。 だから、この時、彼女が言った意味が解らなかった。

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