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5.背徳
ジェルの注がれた後孔を颯樹の指が出入りしている。
「拒絶しても痛いのはお前だけだよ、真」
聞かされる言葉が、ずっと記憶の底に抑え込まれていた過去と重なる。あの時は、この声の持ち主を知らなかった。
「ほら、このあたりが好きだろう」
突然の衝撃に息を詰めた。電撃を受けたような快感が走り、のけぞった。
「ほらほら、もっと感じていいんだよ」
「や、めて、やめてくれ」
「嘘をつくな。腰を振りながら何を言っても、説得力がないんだよ。ほら、三本入った」
こじ開けられた体は苦痛を訴えながらも、指がそこを撫でてくれるのを待っている。
「どんな気持ちだ? 誘いにのこのこ乗って後輩に犯されたと知って。
男癖の悪い姉を紹介したら、気に入っちまって、結婚までしたのに、裏切られていて。
義理の弟に大好きだった妻と間男の前で、また犯されて――」
颯樹の指が抜かれ、代わりに猛った雄があてがわれた。
ぐさりと串刺しにされ、僕はあえいだ。指とは違う重量を持ったものが、ゆっくりと内壁をこすりあげる。
この感覚は覚えがある。
「こんなこともしたよな」
胸の豆粒のような突起を、両手の指先で引っかかれると、胸から体の芯へ甘い痺れが走った。
僕はだんだんおかしくなってきた。
背徳に満ちた関係、異常な状況。もう考えることを放棄した僕は、目の前の義弟が与えてくれる快楽に縋り付いてしまった。
「あ、あっ、さつ、き、颯樹……」
「素直になってきたじゃないか。いい子だよ、真」
与えられる優しい言葉、じわじわと感じさせられる体内、繰り返される胸からの強い刺激。喘ぎが止まらない。
「ああっ、もう、もうっ」
「いっていい。許してやる」
抽挿が激しくなり、僕は頭を左右に振った。突き上げられる感覚がたまらない。追い上げられ、追い詰められて、僕はとんだ。
締めつけた体内に颯樹の欲望も注ぎ込まれた。
颯樹の胸に抱き寄せられている僕は、徐々に現実に帰ってきた。
未だ僕を拘束したままのこの義弟は、実の姉とその不倫相手を毒殺した。逆らえば何をされるかわからない。
颯樹が乱れた僕の服を直し始めた。下着も新しいものを穿かされる。
なぜこの家のことにこんなに詳しいのか、訊くことが恐ろしかった。
「雨がやむ前に出るぞ」
颯樹にまた腕を掴まれた。
起き上がると嫌でもふたりの死者が見え、僕は顔を背けた。
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