3 / 123
愉快
本を手にし、俺はまた仰向けに脚を組んで寝転び、薄いそれをパラパラとめくる。
過激で誇張しまくったヤリまくりイキまくりの漫画を流し見ながら、ふと、ハッとした。
……なあこれさ、ひょっとしなくても、今、俺が寝てるこの布団で、毎回オナってんの……?
その思考に行きついてしまったせいで、もうなんか一気にぞわわっとムズ痒くなって。
子どもの頃からの幼なじみだからこそ感じてしまった、妙な生々しさと気恥ずかしさに、思わず言ってしまった。
「……お前、いつもこれで、ここで抜いてんの?」
「えー、なにー?」
穏やかで間延びした、いつもの調子の声が聞こえる。
……これ。と、ベッドの上から腕をおろし、ひらひらとエロ本を見せる。と、すぐさま下からガタッと大きな音がして、寝ていたベッド全体が跳ね揺れた。
「ッい゙だ! ちょっと! なにしてんのっ、それどこで……!」
「ぶあっはは、頭打ってやんの」
思ったとおりの反応に、盛大に吹き出してゲラゲラ笑う。
バタバタと慌てた様子で梯子をのぼる足音がして、現れたやつはやっぱり想像どおりの焦った困り顔で、それが面白くて口元がゆるむ。
「こういうのはさ、ちゃんと隠しておけよ。な、兼嗣(かねつぐ)くん?」
ニヤニヤしながら言えば、兼嗣は顔を真っ赤にしてベッドの上まであがって来ようとする。
さすがに、ロフトベッドは天井が近くてめちゃくちゃ狭い。
ひとりでも窮屈なそんな空間に、無駄に長身で体格のでかい男が入ってくるのは、むさ苦しいしキモい。
「馬っ鹿お前、こっち来んなっ、せまい!」
「いいからそれ見ないで! 返してよ!」
「見られるようなとこに置いてたお前が悪いんだろー? あっはっは! それにしてもお前、どんな性癖だよ、これ」
そう簡単には盗られないように、本を遠ざけて、脚で宙を蹴ってやつを牽制する。
もちろん本気じゃない。ただの悪ふざけだ。
「もうっ、怒るよまじで! みーちゃんってば!」
「ぶっは、ちょっ、狭いんだから……っ、わはは!」
梯子に片足をかけたまま、本を奪おうと伸ばしてくる無駄に長い腕をかわしながら、腹を抱えて笑い声をあげた。
兼嗣の肩を脚で押しやり、上機嫌になる。ちょっと楽しくなってきた。
兼嗣も『怒るよ』なんて言いながら、半笑いじゃねーか。
ペットとじゃれあっているような戯れに、気を良くした俺は調子に乗ってしまって。
ともだちにシェアしよう!